海外から仮説実験授業に関する問い合わせ

 海外から,仮説実験授業に関しての問合わせのメールがあった。

 私が以前ASE(英国科学教育協会)のオンライン国際誌に書いた論文を読んだらしい。

 どうやら,博士課程に入学したての人らしく,研究テーマを探しているうちに関心を持ったらしい。「仮説実験授業に関する英語文献や,授業書の英訳があるか」という内容であった。とりあえず,舟橋さんらの翻訳本と,私がESERA(欧州科学教育学会)で発表した論文を紹介しておいた。仮説実験授業の基本概念は,欧米に先んじていたことは間違いない。しかし,それらがほとんど認知されていないのを残念に思って,何度か英語圏で紹介してきた。こういう問い合わせがあるってことは少し効果があったということか。

 しかし,現在の私は,既存の「科学教育研究」の文脈で仮説実験授業を論じるのは,あまり意味がないと感じるようになってきている。仮説実験授業の基礎理論を板倉聖宣さんが提唱したとき,近年流行している「素朴概念(日常概念)と科学概念の対立の克服」という問題意識が根底にあった。それが仮説実験授業の基礎理論の一部を担っているのは間違いない。しかし,それは仮説実験授業の理論の一部に過ぎない。「仮説実験授業には,それとは別の根源的な問題意識と理論背景があり,それは,現在のアカデミアで行われている教育研究とはかけはなれており,またその文脈では評価(理解)されないだろう」というのが私の現在の考えである。だから,あまりこの人の研究には役立たないかもなーと思っている(ちょっとこのあたりのことはいずれ詳しく書いてみたいが,今はペンディング)。Phdを取るには既存の研究の文脈に乗らないといけないからだ。