科学開講展

科学開講

 暮れに「親子孫で〈たのしい仮説実験〉ワークショップin大阪」(楽知ん研究所)に参加したついでに,「科学開講展」に行ってきた。

 京大に残された旧制三高由来の近代科学教育の実験機器の展示会である。2014年12月末から2015年2月末まで大阪,同3月から5月いっぱいまで東京の,それぞれのLIXILギャラリーで開催されている。

 この展示会にあわせて出版されたブックレットにコラムを執筆したので,どんな展示会か興味があった。

 大阪LIXILギャラリーというのは,グランフロント大阪南館タワーというビルにある。土地勘がないので迷った末にたどり着いたら,このビルはワークショップ会場のルネサンス大阪高校とは目と鼻の先にあった。

 たどり着いてみると,ビルはショッピングモールとなっていて,休日だったということもあり賑わっていた。ところが,モールの案内板や掲示板を探しても,どこにもLIXILギャラリーの場所や展示会の案内が見つからない。

 ビルの中を迷ったあげく,南館を見つけたがエレベータは9階までしか通じていない。ギャラリーは12階にあるはずである。9階まで行ってみると,「ここから関係者以外は立ち入り不可」という看板がある。ここから上の階はオフィスがはいっているのだ。仕方ないので看板を乗り越えて,オフィス利用者向けのエレベーターに乗り換えてようやく12階の会場にたどり着けた。
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 会場に着くまでのハードルが高すぎである。案の定,モールの賑わいに反して訪問者は我々二人だけであった。会場にいた警備員さんに聞いたら,ギャラリーの固定客がいて展示会ごとにたのしみに来るような人がいるそうである。また,展示会とタイアップした講演会の時などはかなり賑わうこともあるとのこと。

 いずれにしても,この展示会をはじめから目指している人だけがこの会場にたどり着けるようになっていて,買い物のついでにぶらりと訪れるような人は皆無のようである。
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 まぁ,そんなに広い会場ではないので,10人も人が来れば結構な賑わいという感じになるし,企業が無料の文化活動として行っている展示会なので,あまり集客に熱心ではないのだろう。
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 展示会そのものは,楽知ん研究所の吉川辰司さんが復元している摩擦起電器や,ライデンびん,マグデブルグの半球などを見ることが出来てよかった。それに,この頃の実験機器はとても味わいがある。化学天秤などはインテリアとしておきたいくらいである(自分の家にはそんなスペースはないが)。16149594091_d51e3397a0_z

 生物関係の展示物も結構よくて,ミツバチやカイコ,カタツムリの模型がよかった(写真を撮るのを忘れた)。受精卵の模型もよかったなぁ。ああいうのは,今の高校にあってもいいと思うのだが。CGよりずっといいと思う。

 ブックレットには,これらの展示物と写真,解説が掲載されている。一般書店やアマゾンなどでも注文可能である。私が執筆したのは直接この展示物の解説ではなく,科学教育の歴史を書かせてもらった。

 この展示会の名称は「科学開講」となっているが,「本当の科学教育のルーツは,このような学校教育に科学が取り入れられるずっと以前,近代科学の誕生とともにあった,したがって,ガリレオ・ガリレイによる近代科学の誕生とともにある」というのが私の立場である(師と仰ぐ板倉聖宣先生の受け売り)。この件については,書き出すと長くなるので,またいずれ改めてこのブログでも論じたいと思う。

 したがって,私のコラムは明治期の旧制高校を「科学開講」とするこの展示会の趣旨とは若干ずれると思ったのだが,編集者が理解を示してくれて,好きなように書かせてもらったのでありがたかった。