コーヒー実験の測定結果

「コーヒーカップとスプーンの接触音の音程変化」 『物理教育』 (日本物理教育学会),55巻4号(2007年12月) ,pp.291~296.

 コーヒー実験を実演してみせると,「音程の変化」の違いがわからないという人がたまにいる。そういう人は大人に多い。歳をとると音感が鈍くなるのだろうか。いわゆるモスキート音みたいなものかもしれない。

 私としてはそこまで微妙な音程変化とは思えないのだが,いずれにしても,この現象の音程変化を測定してグラフで示したいと思っていた。そこで,音波をフーリエ変換してグラフ化するフリーソフトを使用して測定したことがあるが,うまくいかなかった。

 耳で聞くと明らかに音程が変化しているのに,ソフトを通すと波形のグラフに明確な違いが見られないのである。ところがある日,ふと思いついて音楽室に行ってボーカル用の高級なマイクロフォンを借りてきて測定してみたところ,一気に解決してしまった。

 これまでは,音声チャット用の安っぽいマイクを使用していたので,もともとマイクの拾う音域が狭かったのであろう。もっとも,「マイクを高級なものに替えればうまくいくのではないか」ということは,前から気にはなっていた。そこでこの現象をテーマに修士論文を書きたいと言う大学院生には伝えてあった。しかし彼からの報告では「どうしてもうまくいかない」の一点張りであった。そこで,別の要因だろうと思って,別のソフトを試したり,楽器用の測定器を借りようと探してみたりして,回り道をしてしまった。

 ともあれ,いいデータが出たので,速攻で1日で論文にまとめて物理教育学会に投稿した。すると,「実験データだけで教育的意義も示せ」との改訂意見がつき,授業にかけた結果までつけ加えて掲載に至ったのがこれである(そのときついたもう一つの改訂意見が,「実験風景の写真に写っている私の机上が散らかりすぎている」というものであった。確かに最初に投稿した写真は今見返してみると,ひどすぎる(^^;))。

4件のコメント

  1. はじめまして。埼玉大学の教育学部の学生です。
    先生の書かれた「コーヒーの音程変化の実験」に大変興味を持ちました。実際に再現実験を行い理解を深めたいと考えているのですが、1967年にケンブリッジ大学の数理雑誌にのせられたファレル,マッケンジー,パーカーの論文を見つけられずにいます。『journals cambridge org』というサイトにて有料で購入するほか、方法はありませんでしょうか。

    ご教授お願いいたします。

    突然の連絡大変申し訳ありません。

  2. 大樹さん、こんにちは。
    http://ci.nii.ac.jp/books/
    で調べると、全国の大学図書館の文献が調べられます。
    これによると、埼玉大学の数学科図書館にこの雑誌が所蔵されているようです。数学科に行けば複写させてもらえると思いますよ。
     再現実験をして、何か面白いことがわかったら、ぜひ教えてくださいね。単なる感想でも結構ですよ。

  3. 返信遅れてしまい申し訳ありません。おかげさまで、参考文献を入手することが出来ました。再現実験を行っている最中ですが、撹拌する装置を作成しようと思索中です。
    返信本当にありがとうございました。

  4. 大樹さん,論文入手できたとのことでよかったです。また何かありましたらご連絡ください。実験結果の報告も楽しみにしています。

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