この夏に,小学校の初任者研修の1つ「理科観察・実験実習研修」の講師をする機会があった。たまたまこの研修が私の勤務先の高校で行われることになり,外部講師のほかに会場校の教員も協力してほしいということで,その任が回ってきたのだ。
この研修は,県の「平成25年度児童生徒の理科離れ対策事業」の一環ともなっているとのことであった。小学校の先生は理科の苦手な教員も多いので,その対策として特に初任研でも重点を置いているということなのだろう。
そういえば,「理科離れ」という言葉が頻繁に言われるようになったのはおそらくここ10年~20年くらいの間だと思う。そうなると,いま小学校の教員に初任として採用された人たちは,まさに「理科離れ世代」である。
小学校の先生の多くは教育学部出身で,高校時代文系のクラスだった人がほとんどだろうから,かなりの割合の人々が小学校から理科離れしていた世代ということになる。
実際,この研修参加者に実施した事前アンケートの結果を見ると,高校時代に理系だった人は13%とある。参加者は近隣小学校の初任者29名なので,計算すると4名だけが理系クラスだったことになる。
しかしこれに対して,理系全般への興味の割合は,「とてもある」が27%,「少しある」が54%ということで,8割以上が理系には興味を持っており,理科指導が楽しいと答えている割合も8割以上であった。
また,「指導しにくい教科(3つを選択)」では,トップが「国語」(193%…一人で3つ選ぶので100%を越えている)であり,次が「総合」(192%)と「道徳」(160%),そして専門性の高い「音楽」(156%)や「図工」(142%)などが上位を占めている。「理科」は114%と,「社会」の163%よりも低い。ちなみに一番低いのは「算数」(36%),次が「家庭」(58%)である。
一方,理科の中の「一番興味のある科目」としては,私の専門である「物理」はたったの10%(一番は「生物」の53%),「理科指導上不安な領域」も物理は「とてもある」,「少しある」をあわせると90%を越えていた。物理は理科の中でも敬遠されがちなのは,高校生と同じである(高校生のなれの果てが彼らなのだから,当たり前といえば当たり前である)。
要するに,「高校時代から理科離れはしていたが,理科はそれほどきらいではない。しかし物理に関してはとっても不安がある」という人々が今回の受講者の平均像だと思われた。
(続く)
はじめまして。
私も仮説実験授業に魅せられた1人です。
私もまさに理科離れ世代です。
ただ,幸運なことに仮説実験授業を実際に受け,理科が大好きになりました。
初任者研修で「ころりん」とはなんと素敵なんでしょう!
私の県では初任者研修が理科の時間に行われます。
理科専科が児童に授業を行っている間に研修を行う体勢なので,
初任校では理科を授業することはほぼありません…。
ですので,教員の理科離れは当然さらに進むわけで…。
教員が「楽しい理科」に触れて子供たちに理科が楽しいということを
もっと知ってほしいと願うばかりです。
理科は楽しまなきゃもったいないですよね!!
みさきさん,コメントありがとうございます。
県によって,初任研の体制もまちまちなのですねぇ。
近々,今回初任研に参加してくれた先生方をさそってサークルでも開こうかなぁ,とも考えています。若い先生が一人でも多くの科学の楽しさを子どもたちに伝えるようになって,子どもたちの笑顔が広がるといいなぁ,と思っています。
ころりんの授業は、いいですね。
初任研のみなさん、自分で考える楽しさを味わってくれたことでしょう。
小学校の先生たちには、仮説実験受業や岩波科学映画の授業を
受けてもらいたいです。
以前、科学未来館で親子対象で岩波の〈力のおよぼしあい〉をやったら、
おかあさんたちが感動して、「ミュージアムショップへ映画を買いに走ったけど
売っていなかった」と感想を書いてくれました。
子どもたちを科学好きに育てるのに大事なのは、まず、おかあさんや
小学校の先生たちに科学を学ぶたのしさを感じてもらうことだと思います。
即効性はないけど、高校生は何年かすると、おかあさんや小学校の
先生になるんですねぇ。
だから、物理嫌いにしてはいけないんだけどね。
長谷川さん,コメントありがとうございます。
そういえばテレビにも良く出ている有名な(ということになっている)先生が,「最近は物理が選択制になったので,物理を学んだことのない若者が増えた。そういう若者は,物理が好きか嫌いかもわからない。昔は物理が嫌いだと言う人が多かった。むしろ昔のほうがよかった」と書いているのを読んで,あきれたことがあります。
この人は,「物理が嫌いになってもいいから,とにかくおしつけちゃろ」というわけです。ボクは嫌いになるくらいなら,教えない方がいい,と思います。
もちろん,好きになってくれるような授業をするのが一番ですけどね。やっぱりたのしさが一番。