3-1最初の摩擦起電機の発明

最初の空気ポンプを作成したゲーリケはまた,最初の摩擦起電機も作り出していた。ゲーリケは,大きな硫黄玉を手でこすって起こした摩擦電気で静電気実験を行い,その結果を『真空空間に関するマグデブルクの新実験』(1672)に発表した[ref]ゲーリケ著・松野修訳『真空空間に関する(いわゆる)マグデブルクの新実験』(原著1672,楽知ん研究所2009)pp.83-86[/ref]。
3-2摩擦起電機の改良


摩擦起電機は,ゲーリケの実験を王認学会の会合で追試したホークスビーによって改良され[ref]永田英治『たのしい講座を開いた科学者たち』(星の環会2004)pp.56-58[/ref],スティーヴン・グレイ(1666-1736)を通じてデザギュリエや,フランスのノレ(1700-1770)といった科学講座の先駆者たちに引き継がれていった[ref]前掲永田pp.84-86[/ref]。
ホークスビーの摩擦起電機は,硫黄球の代わりにガラス球を大きなプーリーで回転させ,羊皮との摩擦で静電気を起こすものだった[ref]デシャネル『自然哲学論』(1876英訳版p.534。著者によるとこの図はノレ『物理学講義』(1767)からの引用)。[/ref]。1700年代半ばになると,ガラス球がガラス円筒になり,さらにガラス円板と皮革を摩擦させる型に改良された。「ラムスデンの摩擦起電機」である。

1700代後半になると電気盆が発明されボルタが改良し普及させると,これを応用して静電誘導による起電気が開発された。特にウイムズハーストが1880年に開発した起電機は,高電圧を簡単に発生させることのできる装置として普及した。
シリマン(1871)p.557
3-3ライデンびんの発明とフランクリン


オルムステッド『自然哲学と天文学の基礎知識』(1847)
摩擦電気をためる装置は,デザギュリエの死後1746年にオランダのライデン大学のミュッセンブルックによって発明され,ライデンびんの名称で広まった[ref]前掲永田 pp.145-150[/ref]。ノレはいち早く科学講座にこのライデンびんをとりいれた実験を行い,その普及に貢献した。
アメリカ植民地にいたフランクリン(1706-1790)も,いち早くライデンびんを使用して図書館の仲間と静電気実験を行ったひとりである。その実験を元に,彼は電気の一流体説(プラスマイナスの概念)を唱え,電気の先端放電現象を発見した。それをもとに雷の正体が電気である事を証明する実験法や,避雷針を発明した[ref]板倉聖宣『科学者伝記小事典』(仮説社2000)pp.58-59[/ref][ref]板倉聖宣『フランクリン』(仮説社1996)[/ref][ref]フランクリン著・宮地祐司補訳『電気の実験と考察』(原著1751,楽知ん研究所2006)[/ref]。
3-4たのしい静電気科学実験の伝統と復元
p.267.
1700年代~1800年代には,摩擦起電機やライデンびんを使用した,楽しい静電気実験が行われていた。そのほとんどは,現代では忘れられている。
宮地祐司(楽知ん研究所)は,1700年代に行われた一連の静電気実験の様子を明らかにし,「大道仮説実験〈びりりん〉」を開発した[ref]『楽知ん絵本2 びりりん』(楽知ん研究所2001)[/ref][ref]『〈びりりん〉フリップBook』(楽知ん研究所2002)[/ref][ref]宮地祐司京都教育大学修士論文2005[/ref]。これはまさに,1700~1800年代の静電気実験を現代に復元したものと言える。
また,吉川辰司(楽知ん研究所)は宮地の研究を元に,当時の静電気実験器を多数復元している。


