科学実験機器のルーツ【3】静電気実験とたのしい科学実験講座

3-1最初の摩擦起電機の発明

ゲーリケの摩擦起電機
ゲーリケの摩擦起電機

 最初の空気ポンプを作成したゲーリケはまた,最初の摩擦起電機も作り出していた。ゲーリケは,大きな硫黄玉を手でこすって起こした摩擦電気で静電気実験を行い,その結果を『真空空間に関するマグデブルクの新実験』(1672)に発表した 1




3-2摩擦起電機の改良

ホークスビーの静電気実験
ホークスビーの静電気実験
ラムスデンの摩擦起電機
ブレイク『自然哲学の会話』(1835)図版14下がラムスデンの摩擦起電機

 摩擦起電機は,ゲーリケの実験を王認学会の会合で追試したホークスビーによって改良され 2,スティーヴン・グレイ(1666-1736)を通じてデザギュリエや,フランスのノレ(1700-1770)といった科学講座の先駆者たちに引き継がれていった 3

 ホークスビーの摩擦起電機は,硫黄球の代わりにガラス球を大きなプーリーで回転させ,羊皮との摩擦で静電気を起こすものだった 4。1700年代半ばになると,ガラス球がガラス円筒になり,さらにガラス円板と皮革を摩擦させる型に改良された。「ラムスデンの摩擦起電機」である。

電機盆
電気盆。グランド『自然哲学の基礎』(1836)p.248

 1700代後半になると電気盆が発明されボルタが改良し普及させると,これを応用して静電誘導による起電気が開発された。特にウイムズハーストが1880年に開発した起電機は,高電圧を簡単に発生させることのできる装置として普及した。

ウイムズハースト
ウイムズハースト式誘導起電機。アトキンソン『ガノーの物理学』(1910)p.819

凝集検電器
ボルタの凝集検電器
シリマン(1871)p.557

3-3ライデンびんの発明とフランクリン

ライデンびん
ライデンびん。フェルプス『自然哲学の親切な講義』(1837)p.337
ライデンびん
ライデンびん
オルムステッド『自然哲学と天文学の基礎知識』(1847)

 摩擦電気をためる装置は,デザギュリエの死後1746年にオランダのライデン大学のミュッセンブルックによって発明され,ライデンびんの名称で広まった 5。ノレはいち早く科学講座にこのライデンびんをとりいれた実験を行い,その普及に貢献した。

 アメリカ植民地にいたフランクリン(1706-1790)も,いち早くライデンびんを使用して図書館の仲間と静電気実験を行ったひとりである。その実験を元に,彼は電気の一流体説(プラスマイナスの概念)を唱え,電気の先端放電現象を発見した。それをもとに雷の正体が電気である事を証明する実験法や,避雷針を発明した 6 7 8

3-4たのしい静電気科学実験の伝統と復元

グレイ
グレイ『自然哲学の基礎』(1850)
p.267.

ひらひら君
ひらひら君(楽知ん研究所)

 1700年代~1800年代には,摩擦起電機やライデンびんを使用した,楽しい静電気実験が行われていた。そのほとんどは,現代では忘れられている。
 宮地祐司(楽知ん研究所)は,1700年代に行われた一連の静電気実験の様子を明らかにし,「大道仮説実験〈びりりん〉」を開発した 9 10 11。これはまさに,1700~1800年代の静電気実験を現代に復元したものと言える。

 また,吉川辰司(楽知ん研究所)は宮地の研究を元に,当時の静電気実験器を多数復元している。

吉川が復元した静電気実験機器
吉川が復元した静電気実験機器

3-13

電気ブランコ。グレイ『自然哲学の基礎』(1850)p.269
電気ブランコ。グレイ『自然哲学の基礎』(1850)p.269
ブレイク『自然哲学の会話』(1835) 図版15
ブレイク『自然哲学の会話』(1835) 図版15
ホッグス『自然哲学の基礎』(1861)
ホッグス『自然哲学の基礎』(1861)

Notes:

  1. ゲーリケ著・松野修訳『真空空間に関する(いわゆる)マグデブルクの新実験』(原著1672,楽知ん研究所2009)pp.83-86
  2. 永田英治『たのしい講座を開いた科学者たち』(星の環会2004)pp.56-58
  3. 前掲永田pp.84-86
  4. デシャネル『自然哲学論』(1876英訳版p.534。著者によるとこの図はノレ『物理学講義』(1767)からの引用)。
  5. 前掲永田 pp.145-150
  6. 板倉聖宣『科学者伝記小事典』(仮説社2000)pp.58-59
  7. 板倉聖宣『フランクリン』(仮説社1996)
  8. フランクリン著・宮地祐司補訳『電気の実験と考察』(原著1751,楽知ん研究所2006)
  9. 『楽知ん絵本2 びりりん』(楽知ん研究所2001)
  10. 『〈びりりん〉フリップBook』(楽知ん研究所2002)
  11. 宮地祐司京都教育大学修士論文2005